2023年1月16日

一太郎はunicodeの漢文用記号を使ってくれない


きのう、漢文の返り点はunicodeのKanbun(漢文用記号)ブロック(U+3190〜U+319F)に登録されているものを使ってくれたら組版が楽になるのに、という話をしたけど、きょう驚愕の事実に気がついた。

一太郎である。一太郎には漢文入力用のパネルがあるが、そこで返り点として入力されるのが、上記の漢文用記号ではなく、普通の文字(たとえば㆑点は片仮名のレ、㆗点は漢字の中)なのだ。歴史のあるワードプロセッサーなのでunicodeのなかった古代からの遺制なのだろうか。



已矣乎……

2023年1月15日

漢文用記号


unicodeには「Kanbun(漢文用記号)」というブロック(U+3190〜U+319F)に「㆐㆑㆒㆓㆔㆕㆖㆗㆘㆙㆚㆛㆜㆝㆞㆟」が登録されている。原稿を書くときこの漢文用記号を使ってもらうと、組版作業がとても楽。これを普通の文字で代用すると、合符と㆑点以外は文章そのもので使われてる字と区別できず、確認に手間をとるのだ(㆑点を片仮名のレで代用する人もいるけど、それは一括置換で済む)。

漢文用記号は変換候補には出てこないだろうから、「ごうふ:㆐」「れてん:㆑」「かえりいち:㆒」……というぐあいに変換辞書へ登録しておくといいかも。

Shift_JISの時代は文字数が限られていて、代用したり、外字を作ったり、いろいろ苦労したけど、そんな苦労を反映してunicodeは便利になっている。しかし、それがあまり知られておらず、組版の効率を下げてしまっているのが残念。

2023年1月13日

注合印を組んでいく

MS-Word(.docx)からプレーンテキストで書き出すと、注の合印(注番号)が本文の行中にはだかで挿入される。縦組みにするので、この注合印(注番号)をパーレンで囲み、対象文字列の右側行間に置く。この作業をInDesign上で半自動化するスクリプト。


合印は括弧類には付けないので、選択箇所の1文字目にルビとして合印を組む。なお、合印の体裁は親文字の文字スタイル(「注合印」という名前)で付けている。

このスクリプトにキーボードショートカットを付けて(私はCtrl+Cmd+iにしている)て、「.[」』)]?\d+」を検索(私は正規表現検索の「次を検索」のショートカットをCtrl+nにしている)すれば、「Ctrl+n Ctrl+Cmd+i」の繰り返しで次々と合印を組んでいける。

コード;
var cSty = app.activeDocument.characterStyles.item("注合印");
var sel = app.activeDocument.selection;
//注番号の前に区切り「_」を入れて、番号をパーレンで囲む。
var selStr = sel[0].contents.replace(/(\d+)/, "_($1)"); 
//区切りの前後で文字列を分ける。
var selAry = selStr.split("_"); 
//前半部分を対象にする。
var selCha = sel[0].characters;
//後半部分(注番号)を前半部分の1文字目にルビとして付ける。
selCha.itemByRange(0,0).rubyString = selAry[1];
selCha.itemByRange(0,0).rubyFlag = true;
//1文字目に文字スタイル「注合印」を適用する。
selCha.itemByRange(0,0).applyCharacterStyle(cSty);
//後半部分(注番号)を消去する。
selCha.itemByRange(selAry[0].length,-1).contents= "";

2023年1月1日

2023年 新年のご挨拶


明けまして おめでとうございます

旧年中はたいへんお世話になりました。屋号を掲げて組版・校正の仕事を始めて、はや十年目に入りましたが、まだまだ勉強・修練が要ります。本年も、ご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願いいたします。

二〇二三年一月 窮狸(森卓司)
 

2022年に組版を担当した主な本(敬称略)

小松謙『詳注全訳水滸伝』、汲古書院。4月21日に第二巻、7月7日に第三巻。全13巻を年2巻ずつ発行の予定。講釈師の語りの様式をとっている原文の雰囲気を可能な限り写してある訳も魅力ですが、注が圧巻。その読みごたえのある注(脚注)を挿絵も交え、本文と同じ見開きに収めるのは、なかなかの力技です。

4月1日。岡部芳彦『日本・ウクライナ交流史1937-1953年』、神戸学院大学出版会。1915-1937年の巻に続いて担当しましたが、仕上がりを目前にしてソ連が進攻を開始。一日も早くウクライナに平和が戻ることを祈ります。

11月9日。佐藤公彦編訳『胡適政治・学問論集』、汲古書院。戦争と革命の時代、文学者・胡適がどう思考し、行動したのか。組版をしながら、その時代を追体験させてもらいました。