2021年7月12日

『はちどり』;ヨンジ先生が読んだ本

韓国映画『はちどり』を映画サークルの例会でみた。https://animoproduce.co.jp/hachidori/ 

1994年、ソウルでの物語。主人公のウニはチョンハ청하〔廳下〕書堂という漢文塾に通っている。
交友篇 相知満天下、知心能幾人、
を習う。「交友篇」という語を検索してみると『銘心宝鑑』らしい。

ところで、この塾の先生、ヨンジの本立てが写るシーンで、あれ?と思った本があったので、きのうビデオを借りてそこで止め、周りの本の背表紙を読んでみた。


左端からペン立ての近くの『中国古代書法史』までは漢文・書道の教師としてはあたりまえ。でも、その右から、
『労働価値理論研究』
『論理と批判的思考』
『性の歴史 第一巻 知への意志』(フーコー)
『政治経済学原論』
『政治経済学特講』
『監獄からの思索』
『クヌルプ——生涯の三つの物語』(ヘッセ)
『家父長制理論』
『フェミニズムと階級政体化』
『歴史唯物論の再構成』
『資本論 Ⅰ〔上〕』
『歴史唯物論研究』
『民主主義と独裁』
『富者の経済学と貧者の経済学』
『逆読み世界史』
『談論とは何か』
『??????(読めず)』
『第二の性』(ボーヴォワール)
『何をなすべきか』(チェルヌイシェフスキーか、レーニンか)

1994年で大学を長期休学しているという設定なので、わたしより10歳ほど若い人。 光州事件の時は小学生高学年あたりか。 これらの本からすると、80年代後半の民主化運動にそうとう主体的にかかわっていたと思われる。


『クヌルプ』はヘッセの小説。この版らしい。
https://ridibooks.com/books/260000041
本立てからウニがこの本を手に取り、表紙に記されている一文を親指で撫でる。


네, 모든 것이 되어야 할 대로 되었습니다.
ええ、何もかもあるべきとおりです。(高橋健二訳:新潮文庫)
ええ、すべてが、こうあるべきです。(相良守峯訳:岩波文庫)
Ja, es ist alles, wie es sein soll. (原文)https://www.gutenberg.org/files/17622/17622-0.txt

これは三番目の物語の末尾、臨終の薄れ行く意識のなかでクヌルプが神と対話し、そう答えてようやく自分の人生を肯定して最期を迎える。ウニにとってはこの一文だけでも励ましのように思えたのかもしれない。

それにしても、ヨンジ先生が『クヌルプ』を読んでいたのはなぜなのだろう。二つ目の物語でクヌルプがこう語っている——

「ぼくはこれまでたくさんの人と話をし、たくさんの人が演説するのを聞いた。牧師や市長や社会民主党員や自由主義者が演説するのを聞いた。しかし、心の底まで真剣で、いざとなったら自分の真理のために一身を犠牲にする人だと信頼できるような人はひとりもいなかった。」

90年代の韓国は民主化闘争も一段落し、経済成長のもと生活を謳歌する風潮が広がりはじめていたころ。ヨンジ先生もクヌルプのような体験をし、それが長期休学をしているわけなのかもしれない。


(蛇足)

書堂でヨンジ先生が教えていたのは『銘心宝鑑』(『明心宝鑑』)だけれど、板書されている章句と場面との関係もまた興味深いものだった。

(1)最初の授業の板書は

「相知満天下、知心能幾人、」(交友篇)

——この映画のテーマのような句なので字幕にも訳が出ていた。

(2)万引き直後、授業を始めようとヨンジ先生が消した板書は

「益智書云、女有四德之譽、一曰婦德、二曰婦容、三曰婦言、四曰婦工也、」(婦行篇)

——家父長制のもと女性に求められていた徳・容姿・言葉遣い・手技のことらしい。父・兄からの暴力に怯えるウニ(ジスクもそうだと後で分かりましたが)の告白と対照的になっている。

(3)ジスクが万引き事件後初めて書堂に来て、ウニとぎこちない雰囲気になっていたときに板書されていたのは

「明鏡所以察形、往者所以知今、過去事如鏡朝、未來事暗似漆、」(省心篇)

——磨かれた鏡によって形を察する。過去によって現在を知る。過去は鏡のように明らかだが、未来は漆黒の闇のようだ。——二人の和解とともに、この後の展開を暗示しているのだろうか。


2021年6月25日

Macのキーボードビューアの表示・非表示

Macのキーボードビューアの表示・非表示は、画面の四隅にマウスを寄せることでできるようになっていた。「ホーットコーナー」に何か設定しているとそちらが優先されるかもしれないけど。



2021年6月22日

約物、とくに句読点の使い方についての資料

日本語の句読点(くぎり符号)の使い方については明確なものがない。昭和21年、文部省国語調査室「くぎり符号の使ひ方〔句読法〕(案)」というのが、いちばん詳しいかも。ただしいまだに「案」なのだ。

これと「くりかへし符号の使ひ方〔をどり字法〕(案)」が『国語表記の問題』(文部省、国語シリーズ No. 56)の付録になっている。これも昭和21年刊。


『句読点活用辞典』――辞書部分はたいくつだけど、上述の資料などが転載されていて便利なのと、文筆家の句読点考のアンソロジーも入っていて、ちょっとおもしろい。


英語だとカンマの用法はかなり厳密に決まっているようで、「カンマの女王」と称される校正者がいるぐらい。

2021年6月16日

RAW写真の片づけ

写真はJPEGとRAWを同時に撮るようにしている。

JPEGをビューアで見て、目をつぶっていたり、ぶれていたり、使えそうにないものを削除していく。そして、残ったJPEGに対応するRAWを選び出すのは、POSIXのパラメーター展開を使えば簡単にできる。

JPEG334枚を252枚に絞り込んだところ。RAW82枚(=334-252)には対応するJEPGがなくなった。この82枚のRAWを削除したいけど、手作業で選び出すのはたいへん。

しかし、逆に、あるJPEGに対応するRAW(RAF)を見つけるのはファイル名についてパラメーター展開を使えば簡単。

for i in *.JPG; do mv ${i%JPG}RAF RAF/; done
${i%JPG}はi番目のJPEGファイルのファイル名からドットを残して拡張子JPGを取った文字列を表す。それにRAFをつければ、i番目のJPEGに対応するRAWのファイル名になるというわけ。見つけたRAWをサブフォルダ(RAF/)に移動する。この後、JPEGと同じフォルダにあるRAWを削除すればよい。

パラメーター展開については次の文書を参照されたし。
POSIX>Shell & Utilities>Shell Command Language>2.6.2 Parameter Expansion



2021年5月29日

註合印を入れるInDesign javascript

本文中のアンカー箇所(文字)を選んで、註番号を入力していく。

var Anker = app.activeDocument.selection[0];
var AnkerChar = Anker.contents;
var indexStr = prompt("Der Anker ist " + AnkerChar + ".\n Welche Indexnummer?", "");
if (indexStr) {
    Anker.rubyFlag = true;
    Anker.rubyString = "(" + indexStr + ")";
    var cStyle = app.activeDocument.characterStyles.item('註合印'); 
    Anker.applyCharacterStyle(cStyle);
} 

2021年5月16日

旧暦・新暦

きょうは「旅の日」だそうだ。
松尾芭蕉が「おくのほそ道」の旅に出立した元禄二年三月二十七日はグレゴリオ暦だと1689年のきょう5月16日であることに因んでのことらしい(NHK R1情報)。

九月六日=10月18日までの旅だけど、どうしてまた、これから梅雨という時期に出かけたんだろう。夏の盛りの徒も辛かろうに。

和暦と西暦変換はこちらが便利;
 https://keisan.casio.jp/menu/system/000000000230

中国のはこちらだな;
https://sinocal.sinica.edu.tw/


 

2021年5月11日

JIS90年版とJIS2004年版フォントの字形差:モリサワの資料

「字形差」資料の冒頭


現行のフォントはJIS X 0213の2004年版の字形によってる。しかし、印刷所によっては90年版以前のフォントを新組みにも使い続けている場合がある。そういったゲラを校正するとき、この資料があると便利だ。しかし、モリサワのサイトでは奥の方にあって探しづらいのでここにリンクをメモしておこう。

フォント/ 

フォントディレクトリにある、
も、なかなか役に立つハンドブックなのだ。

2021年3月5日

寺田浩晃「三途の川アウトレットパーク」

いつの間にか、一世代回ってしまった。
若者たちもなかなか良い生き方をしている。
がんばれ!